翡翠。金山谷上流のもの。この産地では黒と緑が一緒に出るのが特徴だといわれる。採集時に誰かが石のそばでたき火をした跡があった。その焼けた石の破片を持ち帰ったもの。緑が濃くヒビの少ないもので気に入っている。家に帰ってから石の表面をクリーニングしてから良いものだと気付いた。もっと沢山持ち帰るべきだったかも。現地では真っ黒で汚い石という印象であった。

上のヒスイの裏面。あえて研磨はしていない。矢印は細長い結晶が入っている。たぶんひすい輝石。後で知ったのだが翡翠採りが山の中の大岩を持ち帰るために石の脇で焚火をして石をもろくしてからハンマーでたたくことをするようだ。

荒川鉱山小玉沢の中紫水晶。紫の先端がシャープな三角形になっていればいいなと思ってグラインダーで削ってみたがダメだった。刷毛でこすったような感じで白色になってしまう。しかし、根元の断面は6角形になっている。根元をc軸に垂直に切断すると同心円状の模様が見られる。

富山県黒岳(水晶岳)の柘榴石と水晶。

透明感のある水晶とオレンジ色の柘榴石のコラボする標本が欲しかったが。この標本から分かるのは柘榴石の上に水晶の結晶がかぶさるように乗っている。はっきりと時間的なずれがある。したがってコラボ品はレア?

 

 

坑口のように見える穴。この下方に沸石が多い。凝灰岩と安山岩の境になっている。左側の崖からの崩壊土砂によって穴の下はズリのように見える。穴部分は沸石が密に含まれていたので崖が生じた断層形成時(?)に崩れてしまったのではないか。両側が垂直になっているのはなぜなのだろう。画像に含まれている可能性があるもの:木、植物、屋外、自然

 

写真でははっきりしないが、凝灰岩と安山岩の接触部分に沸石の脈が生じている。

群馬県の沸石産地から採集したもの。このタイプは一部に方解石のやや大きな結晶を含むことがある。もう一つのタイプは安山岩(?)の扁平な空洞に生じたものでそちらには方解石はない。母岩は扁平な平面と平行に割れやすい性質がある。束沸石と思う。板状結晶の集合で平面が輝沸石に似た光沢を持つ。結晶の先端が広がる。

水上鉱山鉱石。母岩に幅8cmの黒鉱脈が入っている。ここでは閃亜鉛鉱と黄鉄鉱が重晶石の中に結晶して入ってくる。方鉛鉱は少ない。黄銅鉱は稀。二次鉱物として孔雀石が比較的に多くみられるのでメインの鉱石はCuだったかもしれない。昔はメチャメチャに解体して大きな結晶を探した。今は金属硫化物がどのように集まってきたのかを物語る形(地球からの手紙)を残し伝えることも大切かなと思うようになった。しかし、問題は保管場所だ。30cm、5kgの石を置くスペースは我が家では苦しい。

ニッケルと考えた溶液の色。有毒らしい。顕微鏡で鮮緑色部分の形(先端の凸凹や表面の条線)がニッケル華に近いと感じた。母岩に金属光沢の部分があるが三角形(ゲルスドルフ鉱)は見えない。紅色も小さくてよくわからない。そして磁性がかなり強いので磁鉄鉱が多いのは確実。しかし、私的にはニッケル!

下仁田でひすい岩を探している。高倉集落の近くの蛇紋岩の周辺を歩いていると青緑の色の岩に出合った。銅の二次鉱物、孔雀石が浮かんだが持ち帰り塩酸で処理しても発泡しない。加熱した塩酸では溶液が鮮緑色になった。結晶の形や光沢も違うと思った。ブルース石とコーリンガ石のようなものようなもののもあった。私の同定はニッケル華。マグネシウムが入ると色が薄くなるという記述がある。ニッケルを含むとブルース石も緑になるという。

笠ヶ岳からクリヤ谷コース2500m地点で採集した玉石。近くの玉石内部にはモルデン沸石みたいな白色の針状結晶が見られた。また、そろばん玉石を思わせる放射状筋の玉髄も見た。登山道の極狭い範囲の観察なので追加探索を期待したい。体力や時間に余裕があれば笠ヶ岳鉱山を上部から訪問することも考えていたが、体力・技術とも不足しすぎ。第二尾根上部は草原が多く道はないがある程度は素早い行動が可能と考えている

 

現在、追いかけている群馬県のオパール産地の石です。遊色はでそうにありません。美石の分野では牡丹石とかクジャク石というようです。オパールや玉髄の小球果(豆)が緑色の粉の中に埋まった感じの石。岩石名は凝灰岩かな?池袋で業者に聞いたところ飾り石にするのは手間がかかる。特にこのような柔らかい石ほど難しいとのでした。まずくぼみのない形にハンマーで成形した後グラインダーで凸凹をなくす。その後ペイパーやすりでグラインダーの跡を目立たなくする。その後エポキシ系の接着剤をよく混ぜ合わせたあとにシンナーで薄めて石にしみ込ませる。できれば真空装置があればよい。その後番数の高いペーパーでつやを出す。のだそうです。
自分なりにやってみましたが結構手間がかかちました。まず、荒整形やグラインダー作業の時に小さい豆が外れてしまうので困りました。それから玉髄部分はやたら堅いのでグラインダーの跡をけすのが大変です。すぐ断念しました。接着剤も結構高い。小さなもので600円もします。匂いが強いので玄関先で作業しましたが、薄めた接着剤が下に垂れて玄関が汚れました。(奥さんに叱られました。)まんべんなく全体にしみ込ませるのも面倒です。大量に液を作って漬け込むのかな?そんなこんなで一応乾かしてみたのが写真のものです。石は大量にありますが1個仕上げるのに時間と手間がかかりすぎる気がします。

群馬県で採集したもの。流紋岩と堆積岩の境目付近に生じた割れ目を充填するようにできたと思われる。母岩に近いところは玉髄。オパール部分もめのうのような縞模様が明瞭。オパール部の一部に小さな黒い粒が見られる。玉髄の小粒?もう少し通って周辺の露頭や地質を調べたい。

蓮華鉱山の露頭から採集した鉱物。夢は淡紅銀鉱の巨大結晶だったがまあこんなところが相場だろう。結晶の長径は1mm以下。第一感は緑鉛鉱。私が採集しなければ風化で粉々になって地球からの手紙は粉砕されてしまう。黄紛銀鉱とか珍しい鉱物を見分けるには眼力が不足しているが、人脈があるのでいろいろと尋ねてみよう。

山田隆さんの調べでミメット鉱と判明した。

Iさんの標本写真を転載させていただきました。根尾谷産です。菊花石の成因には諸説ありましたが根尾谷のものは、Iさんのいう「霰石が石英になった。」というのが定説になってきたようです。Iさんは有名コレクターで東京在住です。

大学の研究室のOB会でプレゼンテーションをしてしまった。小黒部鉱山、蓮華鉱山、荒川鉱山、足尾の紫水晶などの話を30分だけ駆け足で紹介した。アホなやつがいる、人の土地なのにとか様々なリアクションがあった。その後の懇親会で「盆石」の家元を知っているとか、私も「消印マニア」ですとか反応があり楽しかった。

葉片状磁鉄鉱。

秩父鉱山大黒

ミネラルマーケット2018で4000円で出したが売れ残ってしまった。なので(予定のライン?)新宿ミーティングでバザーに。2000円で引き取り手が見つかりました。

楢山の玉髄。初めての訪問。中に空洞のあるものや縞模様のはっきりしたものを探した。努力すればかなりとれるみたい。地元の人もこつこつ採集しているようなのでこっそり採らせていただく感じ。

 クリーニングの過程でいくつかの発見?や疑問がでてきた。皮の部分に黒雲母や黄鉄鉱の小さな結晶がついている。それ以外にも透明でへき開ある板状結晶もあった。玻璃長石?それから絹糸状光沢の針状結晶にも出合った。モルデン沸石?さらに謎の鉱物もあって困っている。それから皮にときどきひも状の玉髄が見られる。これって珍しいの?ありふれてるの?中ノ沢ではよく見られるそろばん玉石は全くなかった。この辺の違いが説明できるようになるといいのだが、、。

楢山の玉髄。穴あき。

【栃木県の金山を比較】

金山誌の記述から表にしてみました。岩石名や鉱脈のタイプなど、文脈の中でないとつかめないものもあると思います。密集している高徳ちかくの5鉱山の位置も金山誌から再作成してみました。どの鉱山もまだ訪れていないので大間違いの可能性もありです。何度も金山誌の鉱山位置にはだまされましたので要注意!

     鉱山名        地質 鉱床                                                      伴う元素

栃木 西沢   流紋岩質凝灰岩、流紋岩、石英斑岩 浅熱水性含金石英脈             Ag,Sb,Bi,Mo,Pb,Zn,Cu,As,W,Fe

 

栃木 中の沢  流紋岩、石英安山岩、角礫凝灰岩質流紋岩 含金石英脈   Cu,Fe,Pb,

栃木 小百     石英安山岩、流紋岩 不規則なせん断性割れ目を充填した緑泥石 Cu,Fe,Pb,Zn 栃木 南沢     流紋岩、石英安山岩、、細粒流紋岩 緑泥石                  Cu,Fe,Pb,Zn

栃木 豊徳     流紋岩と石英安山岩、流紋岩質凝灰岩 含金銀石英脈   Cu,Fe,Pb,Zn

栃木 高田高徳 流紋岩と凝灰岩 浅熱水性割れ目充填含金銀石英脈     Cu,Fe,Zn

栃木 久富      凝灰岩、流紋岩、変朽安山岩 含金石英脈   Ag,Cu,Pb,Zn

栃木 寺島     流紋岩、石英安山岩、 浅熱水性含金石英脈   Ag

栃木 玉船     石英斑岩、流紋岩 含金石英脈   Fe、Zn,

栃木 万珠     石英斑岩 浅熱水性含金銀石英脈   Ag,Cu,Fe

栃木 丸山     流紋岩と凝灰岩、凝灰角礫岩 含金石英脈 多数で脈幅狭し   Fe,Cu,Pb

栃木 石尊山  流紋岩 含金石英脈   Ag,Cu,Pb

栃木 立室     花こう岩、石英斑岩 含銀石英脈   Ag,Cu,Fe

栃木 玉生     花こう岩、石英斑岩 粘土中の石英塊   Ag

栃木 宮山田   流紋岩質斑岩 割れ目充填含金石英・粘土脈   Cu,Fe,Pb,Zn

栃木 富井     東 石英斑岩 西 角礫凝灰岩、凝灰岩 #   Ag,Cu

栃木 羽黒     流紋岩 含銀石英脈   Ag

栃木 今里     流紋岩 浅熱水性含金銀石英脈   Ag,Cu,Pb,Zn,Fe

栃木 大生     古生層の粘板岩 含金銀石英脈    

栃木 那須     砂岩、粘板岩 含金石英脈   Cu,Fe,Zn

栃木 仲妻     砂岩、粘板岩 含金石英脈   Cu,Fe,Pb,Zn

栃木 大鳥     砂岩、粘板岩 含金銀方解石石英脈    

#は以下

帯別 早期 中期 晩期  最上部帯 含金石英脈 ー ー         上部帯 含金・輝蒼鉛鉱・黄銅鉱・黄鉄石英脈 ー ー         中部帯 輝蒼鉛鉱・黄銅鉱石英脈 ー 閃亜鉛鉱・黄銅鉱石英脈      下部帯 黄銅鉱・黄鉄鉱石英脈 重晶石・黄鉄鉱石英脈 黄銅鉱・黄鉄鉱石英脈        

御堂沢鉱山の黄鉄鉱。写真ではうまく表現できなかったが表面のテリが良い。粘土の中に埋もれて産出するせいかも。結晶の形も珍しい。片側の母岩に貼りついた状態で結晶成長したこと以外にも原因があるかもしれない。

 

背嶺峠の灰鉄柘榴石。飯田橋で販売予定品。いくらで?でもいいの手放しちゃって?

花こう岩の顔。スポンジ岩。水晶産地の近くにスポンジが固まったような赤茶けた岩があることが多い。この岩の近くには必ず小さなガマがある。水晶は小さくて採集対象にならないことのほうが多いようだ。

細粒の岩脈(アプライト?)もあることが多い。この近くにもガマがあることがある。スポンジ岩よりさらに可能性は小さい。

岩手県一関市大東町のコランダム。もう少し結晶の小さいものが普通。これは最大径8mmあり、立派。これならサファイアと呼んでもいいと思う。岩手県の天然記念物に指定されていて一般道路地図にも載っている有名産地。

ウェストンの「日本アルプスの登山と探検」の中に、平湯から安房峠を経て乗鞍に登る途中かなり大きな設備の銀山の記載があるという。https://www.facebook.com/ken.kikuchi.564?fref=pb&hc_location=friends_tab&pnref=friends.all「乗鞍鉱山」。とあるらしいが地質図「乗鞍岳」では平湯鉱山で記載されている地点のようだ。近くにチャート(図のSac)の露頭がある。これと鉱化作用は何らかの関係があるのだろうか。

 

背嶺峠の磁鉄鉱から作った玉鋼。広島の刀工・久保善博氏から届いた。2月いっぱい銀座の長州屋で展示されている。磁鉄鉱を砕いてから磁石で選鉱し、その鉄鉱石を自宅の釜(たたら製鉄?)で鋳出したもの。

 久保氏は広島県の無形文化財に登録され弟子を4人持つ。久保さんが作った脇差は80万ほどのこと。購入しようか検討中。

綱木探索の終了。花こう岩地帯に生じた石英・長石脈を追った。全体は白い石英だが長石の中から出た石英には紫がついていた。伝説のアメシストには程遠い。長石の一部にはハロが見られる。褐簾石?

 

ほぼ全体が一つのガマから出た単品の水晶。左右が大きさ上下が透明度で並べて整理・選別する。キレイな水晶はエリートで値段が高くなるのもやむを得ない。右、左の水晶がどれくらいの割合なのかとか、ドフィーネ、ブラジルの割合は?とか調べてみたこともあったが、今回は少し面倒になってしまった。

採れたての日本式双晶。20cmほどのガマの中から出てきたもの。赤い粘土が詰まっていたガマからは親指ほどの水晶が10本くらい、小型ニンジン大のものが2つ。鉛筆大が数十本、トッコが数個。そのトッコにより大きな双晶の基部がついていた!破片を探しているが、片側の先端部が出てきたのみ。10年前のこととしておこう。

下仁田の緑色岩に入る曹長石脈の太い部分に生じた結晶。茶色く汚れていたがサンポールで5分ほど煮てから超音波洗浄したらきれいになった。

上の岩石の裏側にあった晶洞。写真は画像幅3mm。緑色岩に生じる曹長石の結晶はこんなような形態が多いようだ。アルバイト式双晶が繰り返し積み重なるように成長するためなのだろうか。

曹長石の柱状結晶。群馬県下仁田町茂垣。(左右約6cm 撮影は山田隆さんによる

三波川帯の一部に枕状溶岩の痕跡が残っている。玄武岩は緑色の変成岩に変化している。その内部や周辺にある白い脈は曹長石。松原さんの「フィールドガイド」では曹長石の脈内の空洞に翡翠輝石の結晶が生じることが書かれている。この空洞とどんな関連があるのだろう。

広島の刀工から頂いた玉鋼。13kgの砂鉄と13kgの炭を3日間焼き続け1kgの良質の鋼ができる。青い色が部分的に出るのは酸化被膜の厚さ加減のせい?手で触ると汗の塩分のため3年ぐらいで赤さび色になってしまうと言われたのでケースを急造した。

背嶺峠の柘榴石。長石の仮晶の上にできている。2度の鉱化作用の結果と考えられる。

背嶺峠磁鉄鉱産地のシンボル、縞状岩。ゼブラストーンと呼ぶ人もいる。なぜこのような縞ができるのかは謎。

 

新潟県銀山平。荒沢岳登山道の脇の崖から採集。硬度3以下。塩酸で発泡、溶解しない。比重2.7。上越帯の変斑レイ岩類に属する蛇紋岩、斑レイ岩の空隙に生じ、方解石と共存する。ナイフでサクサク切れる感じが印材を加工するときのものと似ている。ブドウ石?という指摘もあったが、私は滑石かなと考えている。

群馬県北部の閃亜鉛鉱。画像幅は2cm。黒鉱中の空隙に生じた結晶。カメラマンの撮影したもの。重晶石といっしょのものがキレイなんだけどなー。

 

鉱物同志会の会誌に終戦直後の益富先生の巻頭言を載せてもらおうかなと思い投稿したが、そのまますぎるので「没」とのこと。以下にUPします。

 

「地学研究」の前身「鑛物と地質」創刊号、意欲あふれる益富さんの言葉に歴史的な価値を感じます。以下にそのまま転記です。下線も原文にあります。旧字は改めました。

 

創 刊 の 言 葉

 

地学の民主化のために

 

支那事変このかた国民は老若男女をとはず、聖戦の名で偽瞞した侵略戦争の駒となって騙使された。家は焼け財は失ひ骨肉四散し、国民は飢と過労に呻吟し敗戦当然の命数であることが明らかとなっても、血に猛る軍閥は更に二千万の同胞の血によって勝利を購ひ得ると頑張った。何も知らぬ国民は竹槍を持たされ、広島・長崎に続いて炸裂するであろう第三・第四の原子爆弾の前に立たされていた。晴天に霹靂をみたるように、突如降し給ふた終戦の御詔書を謹聴したときは、張り詰めた心の緒は一時に断たれ身を支える気力を失った。やがて進駐軍の本土上陸と共に「来るべきもの」を想像して、国史を犯した罪の前に戦慄するの

みであった。然るに進駐軍は秩序正しく平穏裡に上陸を開始した。勝者の驕り、征服者の権柄は当然敗者の受くべきものと覚悟していたにも拘わらず、進駐軍は昨日の敵を敵とせず、恩讐を越えて温かい人類愛を示した上、最大の恐怖であった国体の護持如何は人民の意思によって決せらるべしの、あくまで民主主義に徹した寛大な声明が軍司令部から発令され、ほっとしたのは筆者独りではない。封建時代の報仇の遺風に染まって来た我々と我が幻影に怯えていた卑屈さを()づると共に、米国のヒューマニズムに、原子爆弾以上の驚異の眼を(みは)ったのである。

 

 無辜(むこ)の民衆に向かってはくも寛大であった進駐軍も、これまで日本を支配した軍閥・官僚財閥等反民主的なものに対しては、あくまで峻厳(しゅんげん)呵責(かしゃく)なく、戦犯者は逮捕または追放され、平和な新日本建設の基盤が与えられた。我々地学愛好者はこの国史以来の未曽有の一大変革を、この地質現象に於ける大海浸とそれによって(せい)される二地層間の不整合に髣髴(ほうふつ)するのを想い合わせて、そこから色々の教訓を読み取ろうとするのである。

 

 即ちポツダム宣言履行(りこう)を誓う終戦の御詔書を新旧二地層の不整合面とするならば、旧地層澎湃(ほうはい)と寄せ来る民主主義の大海浸に抗しえず遂に海底の藻屑(もくず)(つぶ)れ去った旧支配階級に(なぞら)られるべきものであり、それは欺瞞・陰謀・搾取等旧日本に暴虐をほしいままにした古生物の永久の墓場である。これに対して不整合面の上に重なるべき新地層は、民主主義の波浪によって営為(えいい)される平和のユートピア建設の温床に例えるべきものであり、その温床を基盤として、平和日本創生の黎明が期待されるのである。

 

 さて我等の地学界の民主化はどうあるべきか、地学専門家は戦時中研究や指導外に戦争一本に駆立てられたが、終戦と共にやっと我に返り(ようや)く民主化の構想とか抱負とかが考えられるようになった。しかし民主化を徹底するためには学界から追放すべき事柄が少なくない。それを今一々挙げることは紙面が許さないから、民主化への根本的な問題を一二拾ってみよう。

 

 例えばこれまである学者が民主化を考えて啓蒙のための執筆や社会進出をやると、密かに陰口を(ささや)いたり、学者の値打ちに(かか)わるような批評をしたりするものがあった。それが学者同士お互いに自由な行動を牽制(けんせい)して学問は民衆から隔離していったことは否めない。今までのこのような島国根性は清算して、学者は右手で研究をして左手で啓蒙に努むべきである。今の大学や専門学校の学生たちが糊口のためや、就職のためのレッテルを稼ぐために好きでない学問を嫌々している者で(ほとん)ど占められているのが実情で、その学問がたまらぬほど好きで最初からこの門をめざして来たものは数えるほどしかなく、大部分はひやかし半分に入って来た者である。学問嫌悪病にとりつかれた角帽や金(ぼたん)が白昼映画館や喫茶店や繁華街の大道に満ちているのはその辺の消息を物語るものである。

 

 これからの大学や専門学校はこれらの不純分子の混入を未然に防がねばならない。そしてここに集まるものはこの学を生涯の伴侶として遊びの境地において学ぶ所の真に熱心な地学の趣味の人々で満たされるのでなければ、傑出した地学者は容易に現れないだろう。

 

 本誌は大衆の地学への関心を深め、民主的基盤の上に日本地学の繁栄を招来せんために創刊されるものである。而して地学知識の普及と進歩のために多くのそれを願う人々の叙述が次々と紹介されるであろう。読者はそれを単に文字の羅列と考えてはならない。地学を奉ずる人々の地学興隆の悲願と、燃えるような研究意欲と、同好相互の友愛と互助の高い精神を読み取らなければならない。

 

 昭和21814日 終戦満1年の日

 

    日本鉱物趣味の会代表

 

         益 富 壽 之 助 

 一部旧仮名使いも直した部分があります。  

道志村白石峠登山道で採集したイボ石。松原先生はこぶ石と呼んだ。菫青石がホルンフェルス中に生成した。最初はこのこぶの中身に菫青石がつまっていると思ったがそうではない。そのへんが道志の車石とは異なる。風化に強い部分と弱い部分の違いはどこにあるのかいまだに明快な説明にであっていない。

北塩原村の黄鉄鉱だがスペインのものと良く似ている。母岩の赤茶色が汚い。ある人がシュウ酸に漬けてさび色を落とそうとしたら全体が白っぽくなり、失敗したとのこと。それで家にあった清掃用のクエン酸を濃いめに溶かした液で10分程煮てみた。


左上のものは置く方向間違い。白くなりすぎずほぼOKかも。酸抜きは40分ほど水につけただけ。母岩に浸み込んだクエン酸や鉄さびが今後どうなるのか変化を見守りたい。

緑簾石のコケの上に生えた透明水晶。水晶の大きさは2mmほど。両錐のものが多くハーキマーダイヤに近いかも。写真に撮ったのはひょっとして日本式双晶?と思わせる形だったから。

 晶洞の外縁にある深緑色はパンペリー石の針状結晶集合であると大御所から指摘を受けました。ありがたいです。

アメシストが成長した後に母岩から分離し、近くの粘土質の母岩に埋没したと思われる。何という幸運。運命の出会い。


久慈の琥珀。宮古方面にかけてかなり広い範囲で産出する。写真は久慈市のもの。久慈市では琥珀採掘跡を歴史的な遺跡として保存し観光資源として利用するようだ。したがって採集活動は難しい。

 野田から小本にかけての海岸でもかなり産出ポイントがある。かなり大きな琥珀も採集できる。こちらは国立公園法の範囲か?

方解石の結晶の上のダトー石。氷長石?

画像幅1cm弱。まだ、単斜晶系の理解ができていない。分析の結果はやはりダトー石とのこと。結晶の形態が産地によって大きく異なるので困ってしまう。

群馬県吉井町にある採石場跡の全体。採石したのは緑色片岩(?)。入口付近はゴミ、Hマンガ、ティシュが散らかっていて汚い。中も古いコンクリート施設が残されていて採掘に使った器具(排水ホースなど)が散乱している。この岩壁の一部に方解石の脈が入っていることがある。その方解石の脈の脇に塩酸で発泡しない細かい結晶の集合体がある。これがダトー石らしい。

ダトー石Datoulite カルシウムとホウ素を含むケイ酸塩鉱物。CaBSiO4(OH) ネソケイ酸塩鉱物で単斜晶系。斜めな四角形が組み合わさった結晶形で何とも表現するのが難しい。群馬県吉井町の採石場跡で採集したもの。1つの結晶は0.3mmほどの小さなもの。でも、結晶形が見える産状のものは比較的珍しい。緑色の結晶片岩?に入る方解石の脇に皮膜状にダトー石が付着している。

このあいだ千葉県和田町で採集してきた「へそ石」。「鉄丸石」ともいう。大きなものは径30cmのものもある。中央にパイプが通っていて、その周りの泥岩が硬くなってダルマ型の玉石ができる。付加体に生じる冷水湧出と関係があるらしい。(生痕化石説は否定された)水石愛好者の中で熱烈なへそ石ファンがいて座布団を作って床の間にかざっている人もいる。新生代第三紀の泥岩中に産する。千葉県のほか神奈川県三浦、静岡県安部川、高知県室戸岬で見つかっている。

関東地方のある鉱山跡から持ち出してきてしまった機械。はずみ車と変速機がついている。中ほどの金属製のカゴに何を入れたのだろう?動力はベルトで伝達されるようだ。「仲田式」と読める銘?が入っている。大きな木製の台に据え付けて使用されたと思われる。私の推測は次のようなものだ。銀鉱石を分離して硝酸で処理したときにスライム状のコロイドができる。このコロイドをから水分を抜くために使う遠心分離機ではないか。だれか、知ってる人教えて下さい。どこかの博物館で引き取ってくれると嬉しいです。

12月31日に判明。http://youtu.be/QnNJA_BWxpU 仲田式細縄機でした。なぜ、山奥の鉱山小屋で縄をなう必要があったのかが新たな謎。

岩手県山田町の豊間根鉱山近くの河原で採集した岩石。大きな斑晶は灰長石。岩石名は玄武岩。見かけが面白いので河原の転石を庭に配置している家を時々みかける。

 

群馬県川場村で産出した巨大水晶。美しくない。石英の塊の中に入っている。ガマはない。岡山県あたりの採石場で出た巨大水晶と似ている。マトリョーシカのように小さな水晶から大きなものへといくつかの層になっていて、成長の様子が想像できる。縦の割れ目には短波紫外線で緑に発光する部分がある。玉滴石だと思う。

戦争中に磁鉄鉱を採掘した小さな鉱山跡で採集した柘榴石。とれたてなので泥がついている。大きな結晶ほど形が崩れたり、表面にてりがなくなってしまうことが多い。しかし、この標本は珍しくしっかりしていて表面もきれいだ。

本に使用したもの。花崗岩に生じた脈。群馬県川場村。クライミングの練習に使われている。この写真を上手に説明してくれる人が出ると嬉しい。小川山のダイクとの比較など。

荒川鉱山の水晶。根本部分が紫色。ここまで泥落とし、ワイヤーブラシがけ、ナイフ・針によるクリーニング、布でこするクリーニングを経ている。

5時間ほど使い残しの塩酸に漬けた後にワイヤーブラシをかけたもの。サビが取りきれていない。塩酸が弱い・古いせいか、つける時間が短いせいか?本当にきれいにするにはもう一度塩酸処理が必要だがちょっと面倒。

 

思い立って超音波洗浄をした。底の割れ目に入っていたサビなどがとれてキレイになった。これで完成ということにしよう。

 

赤倉川の巨大水晶。幅15cm。今、市場に出回りはじめた荒川鉱山の中紫水晶とよく似ている。違いは矢印部の切れ込み具合が大きいこと。ここの水晶は両錐になることもある。それから、赤倉の水晶のほうがクリーニングが大変で、表面の溝に石のようにかたい粘土がこびりついている。一番大きな違いは先端部分だ。荒川のものは全体(四周)ほぼ均一だが、赤倉川のものは片側半分だけ笠をかけたような錘面が張り付いている。

 

知玄社